現在、日本では起業する条件が低くなり、資本金1円でも会社が作れるようになりました。起業した場合、サラリーマンのような給料ではなく、自らの仕事の成果でお金を稼がないといけません。
起業家は自分で年収を決められますが、いったいどれくらいの年収なのか気になりますよね。
今回は、起業後の平均年収や、年収を高くしていくための戦略について解説します。
起業後の平均年収はどれくらい?
日本政策金融公庫の調査では、起業家の平均年収は300〜420万円であることがわかりました。起業家の年収が低い理由の1つとして、起業の目的が人それぞれ違うことが挙げられます。
起業はいつ・誰でもでき、定年で退職した後でもできます。また、社会貢献を主目的として起業する方もいるため、平均すると年収が低くなってしまっている可能性があります。
デロイトトマーツ社が2021年に行った調査によると、東証1部上場企業における売上高1兆円以上の会社役員の平均年収は、9,860万円となっています。売上高が大きいと平均年収が高くなる傾向があります。
COMPASS社が2014年に行った調査によると、海外のスタートアップ企業では、自らの年収を500万円以下に抑えている起業家が70%近くいることがわかりました。海外では、自分の生活の豊かさより会社の成長に投資したいCEOが多く、自分の生活費の分しか年収を受け取らない方もいるようです。
アメリカなど、住む地域によっては物価の関係で生活コストが高く、年収を多くもらっている印象があります。しかし、アメリカのCEOでも、日本のサラリーマンと同じくらいの年収しか貰っていないケースがあるようです。
起業家とサラリーマンの違いは?
起業家になると、どんな働き方になるのでしょうか?サラリーマンとの働き方の違いについてみてみましょう。
労働時間
起業して、自分の時間を大切にしたいと考えている方もいるでしょう。しかし、多くの起業家は、サラリーマンよりの多く働いています。
2021年の日本政策金融公庫のデータでは、週に50時間働いている起業家が、全体の約半数を占めています。
週50時間は、月曜から土曜まで毎日約8時間働いた分に相当する時間です。
また、有名な話では、大手自動車メーカー「HONDA」の創業者である本田宗一郎さんは、年間5,000時間も働いていたといわれています。
週あたりの労働時間に直すと約96時間になり、1日も休まず働いていたそうです。
給料がない可能性がある
サラリーマンは、働いた分に応じて給料が支給されます。しかし、起業家の場合はそもそも売り上げが立っていないと、給料はありません。
起業家がこなさなければならない仕事は、非常に多いです。事業の推進以外にも、経理・法務、場合によっては人事など、やらなければならないことが多くあります。
お金に余裕があれば、人を雇うことで負担が軽減され、自分の事業に集中できます。しかし、お金がない場合は全ての業務を自分で行わないといけません。
仕事の満足度が高い
やるべきことが非常に多い起業家ですが、仕事への満足度・充実度は高いようです。日本政策金融公庫の「新規開業実態調査」では起業家の7割が開業してよかったと答えています。
仕事のやりがいや、自分の能力を発揮することでの自己効力感が高く、仕事の裁量が自由に決められることが要因です。
年収1,000万を目指すための戦略
年収1,000万円は、多くの起業家が、目指したい目標や通過点の1つとして思い描いています。しかし、起業1年目で、年収1,000万円を達成している起業家は多くはないようです。
起業して年収1,000万円を達成するためには、以下の5つの戦略が必要です。
- 売上を増やす
- 営業利益を意識する
- 経費と税金を理解する
- 個人と事業のお金を一緒にしない
- 起業前に仕事と顧客を確保する
ここから、それぞれの内容について解説していきます。
売上を増やす
当然ではありますが、年収1,000万円を実現するためには、まず売上を増やすことが重要です。
どれくらいの売上が必要なのかは、業種によって変化します。例えば、実店舗が必要な場合や、商品の仕入が必要な場合など、業種によって経営に必要なものが変化するからです。
業種によって大きな差異があるため、どの業種に参入するのかじっくり考えましょう。
営業利益を意識する
よく、売上が1,000万円になった時、自分の年収が1,000万円になったと勘違いするケースがあります。しかし、それは間違いで、売上から原価や必要経費などを引いたものが営業利益で、この額の一部が自分の年収になります。
このため、起業すう際には、売上金額だけでなく利益率まで意識しておく必要があります。
とはいえ、年収を増やすためには基本的に売上も重要です。一般的には、売上に比例して営業利益も上がっていくので、まず売上を伸ばすことに注力していき、いつの間にか年収1,000万円を達成していた起業家もいます。
ただし、売上は外部環境によっても左右されるため、次年度も維持できるとは限りません。
売上が低下するケースを考え、営業利益を確保する方法、すなわち利益率を向上させる策を考えておくと、年収が安定します。
経費と税金を理解する
経費と税金を意識しましょう。
確定申告で経費を計上するのは、税金対策が目的です。しかし、年収1,000万円以下の場合、節税効果は大きくありません。
また、経費になるといっても、商品やサービスの購入にお金を使っているため、資金は減っています。
税金については以下の3つを意識すると、手元にお金が残りやすいです。
- 自分にかかる税金の種類
- 年収の変化でどれくらい税金がかかるのか
- 支払いはいつか
これらを意識することでお金の管理がしやすくなり、突然の支払いが発生しても赤字になることを防げます。
「個人」と「事業」のお金を一緒にしない
個人のお金と事業資金を一緒に管理しないことが重要です。
経費を自分の生活に使ってしまい、自分にお金があると錯覚してしまう原因になります。
この対策として、自分の銀行口座と、事業用の銀行口座を分けましょう。
また、クレジットカードも個人用・事業用で分けておくと、指定した口座から利用金額が引き落とされるため、お金の管理が楽になります。
仕事や顧客を確保しておく
独立すると、仕事や顧客は自分で探さないといけません。独立後にすぐ仕事をもらうためにも、仕事や顧客は、独立前に確保しましょう。起業前に仕事があった方が、起業後の不安も少なく済みます。
もし、これから仕事を見つけようと考えている方は、クラウドソーシングやスキル販売など個人ができることから始めてみましょう。
個人でも売上が上がると顧客やリピーターがつき、定期的に仕事がもらえる可能性があります。起業はその後からでも遅くありません。
起業する時の注意点
起業する前に、注意点があります。起業する前はうまくいくことだけを考えてしまい、もしもの時の対策をしていないことがあります。
これから起業したい方は以下の注意点を読んで、ぜひ対策を考えてみてください。
自己資金(資本金)を準備する
会社を立ち上げるためには、自己資金を用意しましょう。
現在は、資本金1円でも会社を立ち上げられますが、手続きや登録費用だけでも25万円かかります。
また、銀行から融資を受けようとしても、資本金1円では融資を受けられない可能性が高いです。融資を受けようと考えている場合は、最低でも資本金50万円あると、融資を受けられる可能性があります。
経営を安定させるためには時間がかかります。売上が少ない時期でも、一定の安定した生活を維持するために、自己資金は多くあった方が気持ちが安定します。
長期的な視点を持つ
起業し、初年度から年収1,000万円を達成した起業家は多くありません。どの会社も長い時間をかけて売上を伸ばし、年収1,000万円を達成しています。
起業して、いきなり結果が出るとは限りません。楽観的な計画ではなく、経営に行き詰まった時や資金のことを考え、具体的かつ長期的な計画が必要です。
起業したての時期は、自分の事業は失敗しないと思い、成功することだけを考えています。しかし、万が一のことを考える慎重さも、成功するためには非常に重要です。
まとめ
今回は、起業家の年収について解説しました。起業家の平均年収は、実はサラリーマンとそこまで大差ありません。
ただし、売上が増えれば比例して自分の年収が上がるため、収入は青天井といえます。
起業1年目で年収1,000万円を達成するのは難しいですが、起業3〜5年になると経営のやり方も覚え、この目標を達成することも可能です。
また、年収が増やせること以外にも、起業することで仕事に対する満足度が高くなり、毎日充実した生活になります。
起業を考える際は、年収ばかりに意識が向いてしまうこともあると思います。ですが、起業して年収を増やしていくためには、事業の成功が不可欠です。
具体的で長期的な計画を立てて、ぜひチャレンジしてみてください!